点数表ご利用の前に

 

1. 標準作業時間算定基準

 定期点検(車検含む)及び一般整備の作業時間算定に当たっては、次のような基準を設定し、これに基づいて算出した。 なお、推奨点検の作業時間算定に当たっては、日整連で定める点検要領に則る作業を実施したものとした。[6)及び日整連発行の実施マニュアル等を参照]
 また、点数表に掲載されている車両及び整備作業によっては、メーカー純正スキャンツールによる初期設定が必要な場合がある。

 

(1) 作業範囲及び作業手順

 定期点検の作業範囲は、日整連発行の「自動車定期点検整備の手引」の点検要領に準じ、原則として点検のみの作業とし、調整・補充・清掃等は含まない。ただし、スパナ等を使用して行う緩みの点検で、緩みのある場合は締め付けを含む。
 また、事業用自動車等(別表3)の12か月点検項目「ホイール・ナット及びホイール・ボルトの損傷(大型車において行う点検)」の点検方法に明記されている、ディスク・ホイール取付状態に馴染みが生じる走行後のホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み点検(締め付け)は作業範囲から除くものとする。
 なお、後日再入庫し、ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み点検(締め付け)を実施した場合の作業点数については、一般整備作業項目「作業番号5300 フロント及びリヤ・ホイール・ナット緩み点検(1台)」として設定した。

 一般整備の作業手順は、各メーカー発行のサービス・マニュアルに準ずる。

 

(2) 設備機器

 認証基準に定められたすべての機械工具に加え、インパクトレンチ等の一般的な省力化機器を使用。
 乗用車及びライトバンはリフトを、また、2t以上の貨物車はジャッキ及びリジットラックを使用するものとする。
 

(3) 作業実施者

 実務経験3年程度の三級整備士が1人で行うことを標準としているが、2人以上で行う作業の場合はその延作業時間とした。
 

(4) 時間の単位

 6分を0.1時間とし、0.1時間未満は四捨五入をした。
 

 

2. 標準点数の設定

 換算係数を設定し、これを標準作業時間に乗じて標準点数とした。


  ∴標準作業時間×換算係数=標準作業点数
 

 換算係数の算出に当たっては、技術要素及び設備要素等を考慮して係数を決定した。
 ただし、定期点検の作業は、難易度が高いものから低いものまで種々含まれているため、作業時間と作業点数を同じとした。
 

 

3. 本点数表に掲載の標準作業点数

 

1) 定期点検作業点数
 

(1) 基本点検点数

 定期点検の基本点数を掲載し、原則として定期点検項目の点検のみの作業を現車について行うときの点数である。
 

①「走行距離項目」を実施した定期点検の点数

 定期点検の基本点数は、「走行距離項目」を実施した点数を掲載している。「走行距離項目」を省略した点検項目の組み合わせは、ユーザーの使用状況等により種々あるため、省略した点数を掲載することは困難であるので、当該点数は掲載していない。このため「走行距離項目」の点検を実施しない場合は、基本点検点数から適宜割引を行う。
 

事業用自動車等(別表3):

 3か月間の走行距離が2,000㎞以下の場合、点検項目中の「走行距離項目」の点検を省略することができるが、定期点検ごとに連続して省略することはできない。

 

自家用貨物自動車等(別表5):

 6か月間の走行距離が4,000㎞以下(6か月点検で実施する項目は4,000㎞以下、12か月点検で実施する項目は8,000㎞以下)の場合、点検項目中の「走行距離項目」の点検を省略することができるが、定期点検ごとに連続して省略することはできない。

 

自家用乗用自動車等(別表6):

 年間走行距離が5,000㎞以下(1年点検で実施する項目は5,000㎞以下、2年点検で実施する項目は10,000㎞以下)の場合、点検項目中の「走行距離項目」の点検を省略することができるが、定期点検ごとに連続して省略することはできない。

 

二輪自動車(別表7):

 年間走行距離が1,500㎞以下の場合、点検項目中の「走行距離項目」の点検を省略することができるが、定期点検ごとに連続して省略することはできない。

(参考)

 「走行距離項目」とは、前回の定期点検実施以降の走行距離が定められた走行距離以下の場合に省略できる点検項目である。ただし、走行距離が短くても「走行距離項目」の点検を定期点検ごとに連続して省略することはできない。

 

(2) 保安確認検査の点数

 自動車の検査は、各種検査機器を使用して行う検査、自動車装置の各部が保安基準に適合しているかどうかを目視等で行う検査及び車両の同一性や車体表示の確認等を行うことになっており、その作業内容は次のとおりである。
 

①検査機器による検査項目

 検査機器を使用して行う検査項目は、次のとおりである。

検査項目

検査機器

自動車から排出されるCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)濃度並びにディーゼル黒煙濃度またはPM濃度

CO・HCテスタ
ディーゼル・スモーク・メータ
オパシ・メータ

ホイール・アライメント

サイド・スリップ・テスタ

ヘッドランプの明るさ及び光軸の向き

ヘッドライト・テスタ

ブレーキ装置の性能及び制動能力

ブレーキ・テスタ

スピードメータ及び速度表示灯の誤差

スピードメータ・テスタ

自動車による騒音及びホーンの音量

音量計

 

②目視等による検査項目

 目視等により行う検査項目は、車種毎に異なるが、すべてを網羅すると次のとおりである。

原動機及び動力伝達装置

走行装置

操縦装置

制動装置

緩衝装置

燃料装置及び電気装置

車枠及び車体

連結装置

乗車装置及び物品積載装置

前面ガラスその他の窓ガラス

騒音防止装置

ばい煙等の発散防止装置

灯火装置及び反射器

警報装置

指示装置

視野を確保する装置

走行距離計その他の計器

防火装置

内圧容器及びその附属装置

その他

 

③同一性の確認

 登録番号、封印、車台番号、原動機型式、幅、高さ、長さ等が当該自動車の自動車検査証の記載事項と同一であるかの確認を行う。
 

④車体表示の確認

 自家用、最大積載量、社名等の確認を行う。
 

(3) 附加作業点数

 車検時に発生すると思われる主な附加作業を掲載しているが、この項目の点数はすでに割引を附加しているので、これらの作業を実施した場合は、基本点検点数にそのまま加算する。
 

2) 一般整備作業点数

 各メーカーの車名別に作業項目ごとの作業点数を掲載した。
 

(1)故障〈整備〉診断

 一般整備作業の各作業項目には故障部位を特定するための点検、診断作業は含めていない。 このため、スキャンツールを使用した、故障〈整備〉診断作業として下記作業項目を設定した。

 

①作業番号0400 故障診断に伴う問診作業:

 本作業項目は、問診シート(クリックすると開きます)に沿った不具合内容の聴き取り(車両状態、不具合の有無、車両情報/部品交換履歴など)を行った際の作業点数を示している。

 

②作業番号0500 スキャンツールによるダイアグ・コードの読み取り・消去:

 スキャンツールを用いて、ダイアグ・コードの読み取り及び消去を実施した際の作業点数を示している。

 

(2) 作業範囲の表示

 標準作業点数は、原則として作業を開始してからすべての作業が完了するまでの点数を示している。したがって当該作業に到達するまでに必要なその他の作業も含まれているが、一般的なものは明示していない。

(例)

7240

リヤ・ホイール・シリンダO/H

タイヤ脱着
ドラム脱着
ブレーキ・シュー脱着
ブレーキ・エア抜き

これらの作業も含まれているが明示していない

 

 疑義の生じやすい作業項目については含、除を表示し、その作業が点数に含まれているかまたは除かれているかを明示した。

(例)

1220

エンジンO/H(含 エンジン脱着)

2811

フューエル・タンク脱着(1個)
(除 燃料抜き取り,注入)

 

 なお、機械加工(シリンダ・ボーリング、ディスク・ロータ研磨等)はすべての作業項目から除いている。
 

4. 本点数表の見方

 

1) 構成

 

(1) 定期点検作業点数

 型式及びエンジン型式の詳細については「適応車型一覧表」を参照する。

 定期点検:定期点検の点検のみの基本点数を示し、2WD車、4WD車等で点数が異なる場合は別々に表示し、仕様により基本点検点数に加算を必要とする場合には整備追加点数を表示した。また、下段に保安確認検査の点数を示した。

 定期点検附加作業:基本点検の結果、整備を要する作業が発生した場合は、当該点数を加算する。(附加作業項目の点数はすでに割引を附加しているので作業を実施した場合はそのまま基本点数に加算する。)

 

(2) 一般整備作業点数

 型式及びエンジン型式の詳細については「適応車型一覧表」を参照する。

 各作業の標準点数を示し、型式、エンジン型式または装置等により点数が異なる場合は当該名称を表示して点数を明示した。

 装備により標準点数に加算を必要とする項目には整備追加点数を表示した。

 作業単位:作業項目に対する単位を( )で表示した。ただし、表示のない場合は1台を示す。

 

2) 作業点数の算出

 

(1) 定期点検

 基本点検は点検のみの作業点数のため、附加作業を行った場合には附加作業点数を加算する。表示されている附加作業項目以外の作業を実施した場合は、一般整備の当該点数を適宜割引いて加算する。
 

(2) 一般整備

 二つ以上の作業を同時に行った場合の点数の算出は次の方法で行う。
 

①作業が関連していない場合

 

(例) リヤ・コンビネーション・ランプとウォータ・ポンプの取替
 実施した作業が直接関連がない場合は、それぞれの作業点数を加算する。

8280

リヤ・コンビネーション・ランプ取替(1個)

0.8

2210

ウォータ・ポンプ取替

3.5

 0.8+3.5=4.3
 

②作業が関連している場合


(例1)シリンダ・ヘッド・カバー・ガスケットとシリンダ・ヘッド・ガスケットの取替
 作業工程上シリンダ・ヘッド・ガスケット取替の時間にシリンダ・ヘッド・カバー・ガスケットを取り外す時間が含まれているため、最終取替部品のシリンダ・ヘッド・ガスケット取替の点数を使用する。

1230

シリンダ・ヘッド・カバー・ガスケット取替(1台)

1.0

1240

シリンダ・ヘッド・ガスケット取替(1台)

6.0


(例2)クラッチO/HとトランスミッションO/H
 クラッチO/H及びマニュアル・トランスミッションO/Hそれぞれにトランスミッション脱着が含まれているため重複部分のマニュアル・トランスミッション脱着を除く必要がある。

4010

クラッチO/H
含 トランスミッション脱着
クラッチ・カバーAssy取替
クラッチ・ディスク取替
レリーズ・ベアリング取替

5.5

4220

マニュアル・トランスミッションO/H
(含 トランスミッション脱着)

10.5

4210

マニュアル・トランスミッション脱着

5.0

 5.5+10.5-5.0=11.0
 (マニュアル・トランスミッション脱着が重複する。)
 

3) 用語の解説

O/H:

部品を完全に分解し構成部品を点検のうえ、衰損部品を取り替え正規の状態に組み付けて必要な調整を行う作業。ただし、部品の脱着が必要な作業は当該項目に含まれ、機械加工は除かれている。

取替:

部品を車両から取り外し、新しい部品に取り替えて必要な調整を行う作業。

脱着:

部品を車両から取り外し、取り外した部品を取り付けて必要な調整を行う作業。ただし、特に指示のない限り他の作業は含まない。

清掃:

指示部品の清掃を行う作業。

調整:

必要な機器を用いて調整を行う作業。

補充:

油脂等の量が不足している場合の補給作業。

含:

指示された作業項目に含まれていることを示す。
(例) シリンダ・ヘッドO/H
(含 シリンダ・ヘッド脱着)

除:

指示された作業項目から除かれていることを示す。
(例)フューエル・タンク脱着(1個)
(除 燃料抜き取り,注入)


【V型エンジンの右バンク・左バンクの定義】

 点数表では、エンジンの車両への搭載向きに関わらず、フライホイールまたはドライブプレート側から見て、右バンク・左バンクとする。
 

4) 作業番号

 本表は検索を容易にするため、各作業項目毎に統一した4桁の作業番号を採用し、次に示す意味付けをした。
 

21

(装置別番号)

(一連番号)

(枝番)


・装置別番号:装置名を示し分類は以下の通りである。

装置番号

装置名

定期点検

エンジン本体

ルブリケーション、クーリング、フューエル

エンジン・エレクトリカル

パワートレーン

アスクル&サスペンション

ステアリング

ブレーキ

ボデー・エレクトリカル

フレーム&ボデー

・一連番号及び枝番:作業項目を示す。

 

5) 点数表で使用している省略記号

 こちらをクリックして下さい。

 

6) 点数表に掲載の推奨点検などについて

 

(1)安心・快適パック

 安心・快適パックは様々な自家用乗用車ユーザーの車両使用状況等に応じた点検・整備を実施するための選択型点検パックです。
 点数表では、下記3種類の点検パックを法定定期点検時以外(法定定期点検の間の時期等)に実施した場合の作業点数について、「定期点検作業項目」に点数設定しております。

 

安心・快適パック一覧

  【シーズン・イン・チェック】
 夏季、冬季など季節によって影響されやすい電気系統や冷却系統などを気候風土や地域性に合わせてチェックする予防整備です。

【セーフティー・チェック】
 使用頻度が低く年間走行距離が少ない車でも、使用していると各部の摩耗や機能低下が進むものです。不意の事故を未然に防ぎ、いつでも安心・快適なドライブができるようチェックする予防整備です。

【ロング・ドライブ・チェック】
 帰省や行楽シーズンなど高速道路を使用する機会が多く、また高速道路でのトラブルは非常に危険があるため、楽しいドライブができるようチェックする予防整備です。

安心・快適パック点検項目

点 検 項 目 シーズ
イン
チェック
セーフティ
チェック
ロング
ドライブ
チェック
ステア
リング
パワーステアリングベルトの張り具合・損傷
パワーステアリングフルードの量・漏れ    
ブレーキ ブレーキフルードの汚れ・量
ブレーキペダルの遊びと踏み込んだ時の床板とのすき間  
パーキングブレーキレバーの引きしろまたはペダルの踏みしろ・もどり具合
ブレーキホース、パイプの損傷・取り付け状態とブレーキフルードの漏れ    
ブレーキパッド、ライニングの残量
ブレーキのきき具合
タイヤ タイヤの空気圧
タイヤの亀裂・損傷・異物  
タイヤの溝の深さ・異常な磨耗
パワー
トレーン
クラッチの作用、またはオートマチックトランスミッションの作用  
トランスミッションの油漏れ  
ドライブシャフトダストブーツの亀裂・損傷  
エンジン エンジンオイルの汚れ・量・漏れ
冷却液の汚れ・量・LLCの比重
冷却装置の水漏れ
ファンベルトの張り具合・損傷
エアクリーナーエレメントの汚れ・損傷    
燃料漏れ    
低速及び加速の状態  
排気の漏れと排気状態  
マフラーの損傷    
エレクトロ
ニクス
バッテリーの液量・比重
バッテリーのクランキング電圧
ヘッドランプ、ストップランプ、テールランプ等の作用  
ターンシグナルランプの作用とレンズ類の損傷  
ウィンドウォッシャーの作用・液量
ワイパーの作用とワイパーブレードの損傷
エアコンベルトの張り・損傷・ガス量

●:日常点検と重複する項目

 

(2)長期使用車両推奨点検

 自動車は機械である以上、その使用により摩耗、劣化するものであり、特に長期使用車両は、より適切に保守管理する必要があります。
 長期使用車両のトラブルを回避するには法定定期点検項目に加えて、長期使用車両特有の点検整備をすることが有効であることから、日整連では長期使用車両に発生する可能性が高い故障・不具合等を未然に防ぐための推奨点検項目を設定しております。
 点数表では、当該推奨点検を法定定期点検と同時に実施した場合の作業点数について、「定期点検時附加作業項目」に点数設定しております。

 

長期使用車両推奨点検項目

点検項目  別表3 別表5 別表6
各種ペダルパッドの摩耗
サスペンションの状態(機能の低下)
(ショックアブソーバーおよびスプリングのへたり)
○※ ○※ ○※
クラッチの作用 ●3 ●6
プロペラシャフトのジョイント部およびベアリングのがた ●12 ●12
ドライブシャフトのジョイント部およびベアリングのがた ●12 ●12
プラグコードの状態 ●3 ●12
ラジエータキャップの状態
エンジンマウントラバーおよびブラケットの状態
インジケータランプの点灯状態
シートベルトの損傷、作用 ●12 ●12

●:記載した月毎の法定定期点検と重複する項目

※指定自動車整備事業規則の特殊な状況(シビアコンディション)で使用している車両の点検と内容が重複しています。

 

 


日本自動車整備振興会連合会